故郷の喫茶店ー亡きTに捧ぐ

 2月上旬、コロナで帰省できなかった故郷に凡そ2年ぶりに戻りました。葬儀には、少し時間があったので、少し街をぶらつきました。

 私の故郷は、群馬県高崎市。この時期は、「上州のからっ風」と呼ばれる「赤城山」、「榛名山」からの北西の冷たい風が吹き下ろします。この日も、快晴なものの「からっ風」の強い日で、コロナ禍という事もあり人出はまばらな午後でした。

高崎も他の地方都市と同様に駅前や郊外は賑わいはあるものの、中心街は閉じている店や空き地などが目立つ寂しい状況でした。その中で、高校時代に良く通った喫茶店がありました。一度閉店したものの、地元の大学とその学生たちにより運営されているとの事でした。

 この店に初めて入った日の事は、鮮明に覚えています。高校1年初夏の日曜日。部活帰りに仲間と入り、2階の窓側の席に座りました。注文したのは、「ホットサンドウイッチ」と「アイスコーヒー」。それまでデパートの食堂や家で、食べたり飲んだりしているものと余りの違いの味に衝撃のような感覚を覚えました。何となく大人に近づいた感覚でした。昔は土曜日の夜になると、「詩人の朗読」などのイベントがあり、この町の文化の発信の一翼を担っていたと思います。

 店の外観や内装はあまり変わっていない様子でしたが、メニューなどは当然のように変わっていました。只、席から通りを眺めていると、50年前にタイムスリップしているような気がして、当時の仲間の事を考え、追想に浸る事が出来ました。